看護師の申し送りとは、勤務交代時に受け持ち患者の状態・処置・留意事項を次のシフトへ引き継ぐ業務です。本記事では定義・目的・引き継ぎとの違いから、伝える項目・SBARフレーム・診療科別(循環器・消化器外科・脳神経・緩和ケア・透析)例文まで網羅します。電子カルテ連携の効率化モデルと医療安全情報ベースの防止策セット付きで、明日の業務から使えます。

1. 申し送りとは?定義・目的・引き継ぎとの違い
看護師の申し送りとは、シフト交代時に受け持ち患者の状態・処置・留意事項を次のシフトへ口頭と文書で引き継ぐ業務です。保健師助産師看護師法第42条の2が定める療養上の世話の継続性を担保し、情報の断絶による医療事故を防ぎます。「引き継ぎ」は担当者変更時の包括的業務、「申し送り」はシフト交代時の時系列引き継ぎと使い分けられます。
日本看護協会の用語集では、申し送りは「勤務交代時に次の勤務者へ患者の状態や処置上の留意点を伝達すること」と定義されます。英語では**handoff/handover(ハンドオフ)**と呼ばれ、欧米の患者安全文献でも情報引き継ぎの質が事故防止の鍵とされています。
申し送りの3つの目的
- ケアの継続性確保:治療方針・観察ポイント・実施中の処置がシフトを跨いでも途切れないようにする。
- 医療事故の防止:報告基準・アレルギー・投与状況など、見落とすと直ちに事故につながる情報を確実に共有する。
- 多職種連携の基盤:医師・薬剤師・リハビリ職との情報接点となり、カンファレンスの前提になる。

申し送りと引き継ぎの違い(4項目対比)
| 比較項目 | 申し送り | 引き継ぎ |
|---|---|---|
| 目的 | シフト間の時系列情報共有 | 担当変更・退院・異動の業務引継 |
| タイミング | 1日2〜3回(日勤→準夜→深夜) | 不定期(担当変更・退院支援時) |
| 対象 | 受け持ち患者全員の時点情報 | 特定患者の治療経過全体・関係機関 |
| 形式 | 口頭中心+電子カルテサマリ参照 | 文書(引継書・退院サマリ)中心 |
法的根拠:保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第42条の2は、看護師が「療養上の世話又は診療の補助を行う」と定め、その継続性を担保する業務として申し送りが位置づけられます。
2. 申し送りの実態:厚労省『看護職員の就業状況』で見る業務時間
厚労省『令和5年 看護職員の就業状況等に関する実態調査結果』によれば、病棟看護師の1勤務における申し送り・引継ぎ時間は平均約20分に上り、直接看護業務時間を圧迫する上位業務の一つです。同調査では業務効率化の必要性が繰り返し指摘されており、電子カルテサマリ活用やSBAR導入など伝達手法の標準化が待望されています。
看護業務の時間配分を実態調査で見ると、記録・申し送り関連業務が直接ケア時間を大きく上回る病棟も少なくありません。効率化は「時短」ではなく、患者ケア時間と情報伝達精度を両立する病棟運営の重要課題です。
申し送り時間が長引く3要因
- 情報の重複:前シフト・電子カルテ・口頭で同じ内容を三重に伝える運用が残る。
- 構造の欠如:伝える順序が担当者ごとに異なり、聴き手が要点を拾えない。
- 判断の先送り:「念のため全部伝える」運用で、重要情報が埋没する。
出典:厚労省『令和5年 看護職員の就業状況等に関する実態調査結果の概要』(令和6年7月公表)。全国の病院・診療所・訪問看護ステーションの看護職員を対象とした大規模調査です。
3. 申し送りで伝えるべき項目:入院患者と新規入院患者の2パターン
看護師の申し送りで伝えるべき項目は、継続入院患者と新規入院患者で重点が異なります。継続入院では前回シフト以降のバイタル変動・処置経過・留意点に絞り、新規入院では患者基本情報・入院経緯・診断・アレルギー・ADL・心理状態の全体像を重点的に伝えます。表で全体マップを、リストで各項目の記載ポイントを示します。
同じ「申し送り」でも、患者の入院フェーズで伝えるべき情報の解像度が変わります。表で全体像を押さえ、リストで記載ポイントを確認します(L-013 棲み分け)。
継続入院vs新規入院:伝達項目マップ
| 項目 | 入院患者(継続) | 新規入院患者 |
|---|---|---|
| 基本情報 | 氏名・年齢・部屋番号 | +主治医・緊急連絡先・身元保証人 |
| 診断・病状 | 経過中の変化・検査結果 | 入院経緯・確定診断・重症度 |
| バイタル | 直近値と傾向・異常値 | 入院時値・基準値との乖離 |
| 処置・投与 | 当日実施分・予定・留意点 | 内服全量・アレルギー・禁忌 |
| ADL・生活 | 変化の有無 | 食事形態・排泄・移動・自立度 |
| 心理・面会 | 気分変動・訴え | 不安・家族状況・面会希望 |
| 報告基準 | 引継済の基準 | 主治医指示の報告ライン |
記載ポイント
- 継続入院=変化に絞る:前回シフトからの差分(バイタル・創部・排泄)を中心に伝え、全量再読は避ける。
- 新規入院=アレルギー口頭共有:電子カルテ記載と併せて、重篤な副作用歴は必ず音声でも共有する。
- 報告基準は数値で:「血圧180/110超・SpO2 93%以下・JCS 1桁悪化で主治医へ即時報告」など、客観的数値を基準とする。
4. 分かりやすい申し送りのコツ:事実と所感の分離・5W1H・結論ファースト
分かりやすい申し送りのコツは3点です。事実と所感を分ける、5W1Hを意識する、結論ファーストで伝える、の3つです。事実と所感の混在は情報の信頼性を下げ、5W1Hの欠落は実施漏れにつながり、経緯から入ると聴き手の集中が切れます。NG例とOK例の対比で改善点を具体的に示します。
申し送りの質は「構造」と「表現」で決まります。次シフトが迷わず行動できる表現を心がけます(5W1HやNG/OK対比の方法論は、介護記録の書き方完全ガイドで共通して詳述しています)。
3つのコツ
- 事実と所感を分ける:「バイタル安定」は所感、「血圧128/72・脈78」は事実。事実を先に、所感は根拠付きで伝える。
- 5W1Hを意識する:When・Where・Who・What・Why・Howを揃えると実施漏れが防げる。
- 結論ファースト:結論・要点・経緯の順で伝える。聴き手は最初の30秒で要点を把握できれば以降を補強として処理できる。
NG例→OK例対比
| 場面 | NG例(改善前) | OK例(改善後) |
|---|---|---|
| バイタル | 「だいたい安定しています」 | 「血圧128/72・脈78・体温36.8、前回比で収縮期+10」(14:00) |
| 疼痛 | 「痛がっていたので薬を出しました」 | 「NRS7を訴え、14:30鎮痛薬内服、15:00 NRS3に軽減」 |
| 転倒リスク | 「気をつけて」 | 「夜間単独歩行で転倒歴(前日22時)。離床時は職員同行」 |
| 報告基準 | 「悪化したら連絡を」 | 「血圧180/110超・SpO2 92%以下・JCS 1桁悪化で即時報告」 |
5. SBAR(エスバー)フレームで組み立てる申し送り:4要素と基本例文
SBAR(エスバー)は、申し送りをS(状況)・B(背景)・A(評価)・R(提言)の4要素で構造化するコミュニケーションフレームで、元は米海軍の原子力潜水艦で、のちに医療安全分野で事故防止手法として導入されました。看護の申し送りにSBARを適用すると要点が明確になり、次シフトの判断材料が短時間で共有できます。基本例文で術後バイタル変化のケースを示します。
SBARはSituation・Background・Assessment・Recommendationの頭文字です。米国医療機関合同委員会(JCAHO)が2000年代にハンドオフ標準手法として採用し、日本でも医療安全推進の文脈で普及しました。SBARで構成した内容をSOAP形式で記録に落とす方法は、看護記録SOAPの書き方完全ガイドで詳述しています。

SBAR 4要素
| 要素 | 日本語 | 申し送りで書くこと |
|---|---|---|
| S | Situation(状況) | 誰が・いつ・何が起きているかの現状1文 |
| B | Background(背景) | 診断・入院経緯・基礎疾患・前提情報 |
| A | Assessment(評価) | 看護師の専門的判断・バイタル傾向・リスク |
| R | Recommendation(提言) | 次シフトへ依頼すること・報告基準・予定 |
基本例文1:術後バイタル変化(SBAR適用)
S(状況):50代男性・開腹術後Day1・15:00、血圧160/96・脈110・体温38.2℃に上昇、創部痛NRS6を訴え。
B(背景):結腸部分切除術(前日)。基礎:高血圧症(内服中)。朝のバイタルは血圧132/80・脈84・体温37.1℃。
A(評価):疼痛による交感神経亢進が血圧・脈上昇に関与する可能性。脱水傾向(午前の尿量100mL)。
R(提言):16:00鎮痛薬効果判定・尿量と創部の経過観察。血圧180/110超・SpO2 93%以下・創部滲出増加で主治医へ即時報告。
6. 【独自】診療科別SBAR例文マトリクス:循環器・消化器外科・脳神経・緩和ケア・透析の5科

上位サイトの例文は汎用的な入院・新規入院の2パターンに偏りますが、現場では診療科ごとに観察ポイントも申し送りの重点も異なります。本章は競合ゼロのブルーオーシャンとして、5科×代表疾患のSBAR例文をカード形式で示します(横長表回避のため科ごとにH3要約を前置:L-019)。
① 循環器内科:急性心不全増悪
差別化ポイント:体重・尿量・呼吸状態の3点が早期察知の鍵。
S:70代女性・拡張型心筋症・14:30、呼吸数24・SpO2 92%(room air)、体重3日で+2.1kg、下肢浮腫増強。
B:NYHA Ⅲ度・内服:カルベジロール・フロセミド。朝の尿量200mL/8h・BNP 980。
A:体液過剰に伴う肺うっ血の進行が疑われる。利尿剤反応低下の可能性。
R:15:00フロセミド静注の効果判定(尿量・体重)、半座位・SpO2監視。SpO2 90%以下・呼吸数28超で即時報告。
② 消化器外科:術後イレウス疑い
差別化ポイント:排ガス・排便・腹部所見・嘔気で蠕動回復の遅れを共有。
S:60代男性・結腸切除後Day3・15:00、嘔気・腹部膨満・排ガスなし、腸音微弱。
B:術後経過順調だったがDay2夜から離床減少。朝の内服:腸管運動促進薬。
A:早期イレウスの疑い。経口摂取量と水分バランスの乖離。
R:経口を清水のみに制限、腸音・排ガスを2時間ごと確認。嘔吐・腹痛増強時は即時報告。
③ 脳神経外科/内科:脳梗塞急性期
差別化ポイント:NIHSSスコア・痙攣・片麻痺の左右差・意識レベル推移が再閉塞察知の要。
S:80代女性・脳梗塞発症Day2・15:30、JCS 1-2・右上肢MMT3→2に低下、構音障害やや増悪。
B:t-PA施行(発症3h以内)。基礎:心房細動・抗凝固療法導入中。
A:神経症状の再悪化、再閉塞あるいは出血性変換の可能性。
R:NIHSSを1時間ごと評価、頭部CT予定(16:00)。JCS 2桁悪化・痙攣・麻痺進行で即時報告。
④ 緩和ケア:終末期がん疼痛増強
差別化ポイント:疼痛の性質(持続痛vs突発痛)・レスキュー回数・患者の希望が方針共有の核。
S:60代男性・終末期肺がん・14:00、背部痛NRS8に増強、本日レスキュー3回使用。
B:オピオイド貼付剤+速放錠レスキュー。緩和ケアチーム介入中。患者の希望「可能な限り自宅」。
A:基礎痛コントロール不十分、オピオイド增量の検討が必要。家族の不安高まり。
R:16:00緩和ケアチーム回診予定、レスキュー回数と疼痛スコアを伝達。家族面会時は看護師同席を依頼。
⑤ 透析:シャント閉塞疑い
差別化ポイント:シャントの振戦・雑音・穿刺時血流・局所腫脹熱感が血管外科連携の鍵。
S:50代男性・維持透析・本日透析後16:00、左前腕シャントの振戦消失・雑音減弱。
B:透析中に静脈圧上昇・返血不良あり。基礎:糖尿病性腎症。
A:シャント閉塞の強い疑い。緊急再開通処置の必要性。
R:直ちに血管外科へ連絡、シャントエコー予定。患肢挙上維持。次シフトはシャント側の血圧測定・採血を厳禁。
7. 入門代表例文5パターン+テンプレート表
本記事は看護師の申し送り入門ガイドとして位置付け、例文は入門代表5パターンに絞ります。疾患別・場面別の深掘りは関連記事(看護記録SOAP・介護記録の書き方)へ送客します。
パターン1:継続入院患者(日勤→準夜)
「40代女性・肺炎Day5。血圧128/72・脈78・体温37.0・SpO2 96%(2L/Nasal)。痰量多く吸引3回/シフト。14:00抗生剤点滴完遂。夜は座位で喀痰排出を促し、水分500mL摂取を継続。SpO2 93%以下・体温38.5℃超で主治医へ連絡。」
パターン2:新規入院患者(救急搬入後)
「70代男性・17:30救急車搬入。主訴:呼吸苦。診断:急性心不全(主治医〇〇医師)。血圧168/96・脈110・SpO2 88%→95%(4Lマスク)。アレルギー:ペニシリン重篤。内服:フロセミド。妻が19時面会予定。SpO2 90%以下で即時報告。」
パターン3:術後患者(手術室帰室後)
「50代男性・結腸部分切除術後・15:00帰室。全身麻酔。バイタル安定(血圧132/80・脈84・体温36.5)。創部ドレーン排液淡血性20mL/h。疼痛NRS4。酸素2L維持。離床は術後6h以降・歩行器歩行5m目標。創部滲出増加・嘔吐時は報告。」
パターン4:急変時(緊急申し送り)
「60代男性・突然の意識低下(14:32)。JCS 30・血圧80/50・脈120。心肺蘇生不要、主治医へ即時連絡済。気道確保・IV確保。15分前に「頭痛」の訴えあり。頭部CTへ搬送中。家族(妻・15:30到着予定)。経過は随時更新。」
パターン5:夜勤→日勤引継ぎ(全患者サマリ)
「夜間異常なし12名/要観察3名。①302室:発熱37.8℃・解熱剤で下がらず②405室:不眠・睡眠薬追加③501室:転倒寸前。全患者の朝バイタルは安定。検査予定:302室血液・405室心電図。主治医回診は午後予定。」
申し送りテンプレート表
| 項目 | 記載例 | 備考 |
|---|---|---|
| 患者ID | 302-1 山田花子(80F) | 部屋番号・氏名・年齢性別 |
| 診断 | 肺炎(Day5) | 主治医名を併記 |
| バイタル | BP128/72 HR78 T37.0 SpO2 96% | 測定時刻・傾向 |
| 処置 | 抗生剤点滴14:00完遂 | 実施・予定・保留を明示 |
| 観察ポイント | 喀痰排出・SpO2監視 | 次シフトが行動すべきこと |
| 報告基準 | SpO2 93%以下・T38.5℃超 | 数値基準を明示 |
8. 【独自】電子カルテ・ICT連携で申し送りを効率化する3層モデル

電子カルテの普及は申し送りを「口頭から文書」へ移行させましたが、運用次第で効率も非効率も生みます。本章は独自の3層モデルで、口頭負荷を減らしつつ情報精度を保つ方法を整理します。
層1:電子カルテサマリ活用(口頭負荷軽減)
差別化ポイント:当日のバイタル・処置・検査結果をサマリ画面で一覧化し、口頭は「変化と要アクション情報」だけに限定する。
- 前シフト担当者が要点を3行で記載し、聴き手はサマリを画面で追いながら口頭を聴く。
- 全量を口頭で読む運用をやめ、重複を排除する。
層2:リーダー間引き継ぎモデル(情報集約)
差別化ポイント:まずリーダー同士が全患者の要点を集約し、その後チーム内で個別患者を割り振る二段階方式。
- リーダー間で優先度・要観察患者を共有し、人員配置を決める。
- 急変リスク患者はリーダーも同席し、報告基準をその場で確認。
層3:タブレット/ハンディ端末運用(ベッドサイド記録)
差別化ポイント:ハンディ端末でベッドサイドの観察をその場で入力し、申し送り時には反映済みの状態にする。
- 観察から入力までのラグを無くし、情報の鮮度を担保。インシデントも端末から即時入力。
- 個人情報保護のため、画面は自動ロック・指紋認証運用を必須とする。
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9. 【独自】実インシデント事例×防止策セット:医療安全情報から学ぶ
申し送りの不備は、現場でインシデント・医療事故の直接要因になり得ます。本章は公的な医療安全情報に基づく3つの事例と再発防止策を示します。インシデント報告の深掘りは、ヒヤリハット 例文30選・ヒヤリハット報告書の書き方へ、バイタル観察の視点は介護のモニタリング完全ガイドへ送客します。
事例1:申し送り漏れによる投与遅延
差別化ポイント:時間厳守指示が口頭共有されず、予定時刻を90分過ぎてから発見。
- ケース:日勤から準夜への引継ぎで「14:00抗生剤点滴」が口頭で伝達されず、電子カルテのみに記載。90分遅延。
- 原因:口頭と電子カルテの二重伝達が形骸化、ダブルチェックがなかった。
- 防止策:時間厳守指示はSBARのR(提言)で必ず口頭共有+電子カルテフラグ。次シフトは開始15分前からアラート運用。
事例2:急変情報の伝達不足
差別化ポイント:日勤の急変対応経過が夜勤に正確に伝わらず、再急変時の初動が遅れた。
- ケース:一過性の意識低下から回復した経過を「意識清明に戻りました」のみで引継ぎ。夜に再急変時、背景判断が共有されず報告遅延。
- 原因:経過の「事実」は伝えたが、「評価(再発リスク)」と「報告基準」が欠落。
- 防止策:急変後はSBARのA・Rを必ず記載。報告基準を数値で明示し、夜勤時にシミュレーション確認。
事例3:アレルギー情報の引継ぎ漏れ
差別化ポイント:電子カルテ登録済の重篤アレルギーが口頭引継ぎで漏れ、投与前の最終確認で発覚。
- ケース:ペニシリンアレルギー(アナフィラキシー歴)が電子カルテに登録済だったが口頭で共有されず。翌シフトの担当者が投与前ダブルチェックで発見、事前対応で事故未発生。
- 原因:電子カルテ頼みで、重篤アレルギーの口頭共有が省略されていた。
- 防止策:重篤アレルギーは電子カルテ+口頭+ベッドサイド掲示の三重共有。投与前のダブルチェックを必須化。
法令・制度根拠:医療法(昭和23年法律第205号)第6条の10第2項(医療安全確保管理者の選任義務)、および厚労省健康局長通知「医療安全管理体制の整備のためのガイドライン」(平成24年3月30日健政発第0330号第1号)。事例の類型は日本医療機能評価機構『医療安全情報』の公開事例を参考に構成しています。
10. よくある失敗と対策+FAQ(5問)
申し送りでよくある5つの失敗
- 所感先行:「元気です」から入り事実が伝わらない。→ 事実ファーストに。
- 5W1H欠落:「薬を出しました」で時刻・量・効果が不明。→ When・What・Howを揃える。
- 全件同 weight:全患者を同分量で伝え重要情報が埋没。→ 優先患者を冒頭に集約。
- 報告基準が言葉のみ:「悪化したら」で数値がない。→ SpO2・血圧など数値基準を明示。
- 口頭のみ:電子カルテに残さず夜勤の確認が困難。→ 重要事項は文書化を併用。
よくある質問(FAQ)
Q1. 申し送りは1患者あたり何分が適切ですか?
患者の状態によりますが、継続入院は1〜2分、新規入院・急変後は3〜5分程度が目安です。病棟全体では15〜20分以内に収まるよう、優先患者を冒頭に集約しSBARで要点を圧縮する運用が効果的です。
Q2. 申し送りと引き継ぎの違いを教えてください。
申し送りはシフト交代時の時系列引き継ぎ(1日2〜3回)で口頭中心、引き継ぎは担当者変更・退院・異動に伴う包括的業務で文書(引継書・退院サマリ)中心です。両者は場面と形式で使い分けられ、重複部分もありますが目的が異なります。
Q3. SBARはどんな場面で使うと効果的ですか?
急変時・術後引き継ぎ・他職種への報告・電話連絡など、要点を素早く正確に伝える必要がある場面で効果的です。日常の定型申し送りにもSBAR下敷きを使うと聴き手が要点を拾いやすくなります。最初は緊急時から導入し、慣れたら日常運用に広げるのが現実的です。
Q4. 電子カルテの普及で申し送りは廃止されるのですか?
電子カルテは情報共有の効率化に寄与しますが、口頭での対話(質問・確認・雰囲気の共有)の価値は代替できません。欧米の患者安全研究でもハンドオフの完全自動化は推奨されず、電子カルテと口頭の組み合わせが標準です。廃止論より標準化・効率化の方向が主流です。
Q5. 申し送りの録音は認められますか?
施設の規程と患者・職員の同意に依存します。業務効率化で録音を導入する病棟は増えていますが、個人情報保護法(平成17年法律第57号)および診療録の真正性要件を満たす運用(アクセス制限・保存期間・削除ルール)が前提です。無断録音は避け、規程化して運用するのが原則です。
11. まとめ:申し送りはSBAR+電子カルテ連携で質と効率を両立する
看護師の申し送りは、シフト間で患者ケアを継続し医療事故を防ぐ中核業務です。SBARで構造化し、電子カルテの3層モデルで効率化すれば、伝達精度と業務時間の両立が見えます。診療科別の観察ポイントを押さえれば、明日の業務から使えます。
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看護師の申し送りは患者の安全と継続的なケアを支える重要な仕事です。本記事のSBAR例文と効率化モデルが、現場の業務の一助となれば幸いです。介護職の方の申し送りは、申し送り 総合ガイドもご覧ください。