書き方・例文・夜勤引継ぎ

申し送りとは?目的・書き方・SBAR形式をわかりやすく解説【2026最新】

看護・介護の申し送りとは?定義・目的・引き継ぎとの違い、SBAR形式、夜勤引継ぎの要点、ICT申し送りノートまで。抜け漏れを防ぐ情報共有の実践ガイド。

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申し送りとは?目的・書き方・SBAR形式をわかりやすく解説

申し送りとは、勤務交代時に受け持ち利用者・患者の状態・処置・留意事項を次のシフトへ引き継ぐ業務で、介護・看護の現場で安全なケアを継続する基盤です。本ガイドでは、申し送りの定義と目的、引き継ぎ・報告との違い、伝えるべき項目、SBAR(エスバー)形式、夜勤引継ぎの要点、ICT申し送りノートによる効率化までを概論レベルで網羅します。場面別の具体的な例文・テンプレートは、看護師の申し送り申し送り例文集申し送りテンプレートの各関連記事で詳しく解説しています。


1. 申し送りとは?定義と目的

**申し送りとは、シフト交代時に受け持ち利用者・患者の状態・処置・留意事項を次のシフトへ口頭と文書で引き継ぐ業務で、英語ではハンドオフ(handoff/handover)と呼ばれます。**保健師助産師看護師法第42条の2が定める療養上の世話の継続性を担保し、介護保険法の運営基準ではチームケアの情報共有手段として位置づけられます。情報の断絶による事故を防ぎ、ケアの継続性を確保する中核業務です。

申し送り(もうしおくり)は、看護・介護の現場で1日2〜3回、勤務が交代するたびに行われる情報共有の場です。前のシフトの担当者が、次のシフトの担当者に対して利用者・患者の状況を伝達します。

申し送りの3つの目的

申し送りは単なる業務引き継ぎではなく、安全なケアを支える明確な目的を持ちます。主な目的は次の3点です。

目的内容期待される効果
ケアの継続性確保治療方針・観察ポイント・実施中の処置を途切れさせないシフトを跨いでも支援の一貫性が保たれる
事故・インシデントの防止アレルギー・報告基準・投与状況など見落とせない情報を共有情報欠落による医療・介護事故を未然に防ぐ
多職種連携の基盤医師・薬剤師・リハビリ職・家族との情報接点になるカンファレンスやケア会議の前提が整う

法的位置づけ

看護の申し送りは、保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第42条の2が定める「療養上の世話又は診療の補助」の継続性を担保する業務として位置づけられます。介護現場では、**介護保険法(平成9年法律第123号)**および指定居宅サービス等運営基準(平成15年厚労省令第34号)第19条等で求められる記録と連動し、チームケアの情報共有手段として機能します。引継ぎ漏れが事故要因になる実態は、ヒヤリハット・事故防止で詳しく扱っています。


2. 申し送りと引き継ぎ・報告の違い

**申し送り・引き継ぎ・報告は、いずれも情報伝達ですが、目的・タイミング・形式・対象が異なります。**申し送りはシフト交代時の時系列引き継ぎ(1日2〜3回・口頭中心)、引き継ぎは担当者変更・退院・異動に伴う包括的業務(文書中心)、報告は上位者や他職種への一方通行の情報伝達です。三者は部分的重複がありますが、場面と形式で使い分けられます。

現場では「申し送り」「引き継ぎ」「報告」が混同されがちです。三者の違いを整理すると、伝達の精度が高まります。

3者の比較

比較項目申し送り引き継ぎ報告
目的シフト間の時系列情報共有担当変更・退院・異動の業務引継上位者・他職種への状況伝達
タイミング勤務交代時(1日2〜3回)不定期(担当変更・退院時)随時(指示時・異常時)
対象受け持ち全員の時点情報特定利用者の経過全体・関係機関特定事象・指示された事項
形式口頭中心+電子記録・カルテ参照文書(引継書・退院サマリ)中心口頭・電話・記録の組み合わせ
方向性双方向(質問・確認あり)双方向一方通行が基本

使い分けのポイント

  • 申し送りは、毎シフト必ず発生する定期業務です。全員の時点情報を時系列で共有します。
  • 引き継ぎは、担当者が変わる節目で行います。対象者の全経過と関係機関の情報を文書で残します。
  • 報告は、指示を受けた事項や異常を上位者・他職種に伝える行為です。(介護記録は、これら3つの情報伝達を集約した公式文書として位置づけられます。)

3. 申し送りで伝えるべき項目

**申し送りで伝えるべき項目は、基本情報・状態(バイタル・ADL)・処置・投与・留意事項・変更点・報告基準の大きく6〜7群です。**継続入所(院)では前回シフトからの変化に絞り、新規入所(院)では全体像を重点的に伝えます。重篤なアレルギーや報告基準は数値で明示し、必ず口頭でも共有します。

伝える項目が漏れると、次シフトが判断を誤るおそれがあります。標準的に押さえるべき項目を整理します。

標準的な伝達項目

項目群具体的な内容記載の要点
基本情報氏名・年齢・部屋番号・主治医新規時は緊急連絡先・身元保証人を追加
状態・バイタル体温・血圧・脈拍・呼吸・SpO2・意識直近値と傾向・異常値の有無
ADL・生活食事・排泄・移動・自立度の変化変化の有無に注目
処置・投与当日実施分・予定・保留・留意点時間厳守指示を明示
留意事項アレルギー・禁忌・転倒リスク重篤アレルギーは口頭+文書の二重共有
変更点前回シフトからの差分継続入所はここに集中する
報告基準数値・状態による主治医報告ライン「悪化したら」ではなく数値で示す

継続と新規で重点を変える

  • 継続入所(院)=変化に絞る:前回シフトからの差分(バイタル・創部・排泄)を中心に伝え、全量再読は避けます。
  • 新規入所(院)=全体像を伝える:入所経緯・診断・アレルギー・ADL・心理状態を重点的に共有します。
  • 報告基準は数値で:「血圧180/110超・SpO2 93%以下・JCS 1桁悪化で即時報告」など、客観的な数値を基準とします。

記録との連動

申し送りの内容は、その日の介護記録として文書化されることで、後からの検証や監査に耐える情報になります。申し送りは「口頭の記録」、記録は「文書の申し送り」と言い換えることもでき、両者は表裏一体です。


4. SBAR形式(Situation-Background-Assessment-Recommendation)の活用

**SBAR(エスバー)は、申し送りをS(状況)・B(背景)・A(評価)・R(提言)の4要素で構造化するコミュニケーションフレームです。**元は米海軍の原子力潜水艦で用いられ、のちに米国医療機関合同委員会(JCAHO)がハンドオフの標準手法として採用し、日本でも医療安全分野で普及しました。要点が明確になり、次シフトの判断材料を短時間で共有できるのが利点です。

SBARはSituation・Background・Assessment・Recommendationの頭文字です。伝える順序を固定することで、聴き手が要点を拾いやすくなります。

SBARの4要素

要素日本語申し送りで書くこと
SSituation(状況)誰が・いつ・何が起きているかの現状1文
BBackground(背景)診断・入院・入所経緯・基礎疾患・前提情報
AAssessment(評価)職員の専門的判断・バイタル傾向・リスク
RRecommendation(提言)次シフトへ依頼すること・報告基準・予定

SBARを記録に落とす

SBARで組み立てた申し送り内容を、そのまま記録に構造化するにはSOAP形式が有効です。SBARのA(評価)はSOAPのA(アセスメント)と重なり、R(提言)はP(計画)に対応するなど、両者は互いに変換しやすい関係にあります。記録の構造化についてはSOAPの総合ガイドをご参照ください。

さらに詳しく

診療科別(循環器・消化器外科・脳神経・緩和ケア・透析)のSBAR例文や、場面別の記述例は本ガイドの範囲外です。看護師の申し送りで診療科別例文を、申し送り例文集で場面別例文を網羅しています。


5. 夜勤引継ぎの要点とタイムライン

**夜勤引継ぎは、日勤→夜勤→日勤の2つの交代点で行われます。**夜間は人員が少ないため、優先患者の集約と報告基準の明示が鍵です。夜勤明けの引継ぎでは、夜間の変化・未解決事項・当日の検査予定・回診予定を次のシフトへ確実に引き継ぎます。タイムラインを意識することで、重要情報の埋没を防げます。

夜勤は、申し送りの中でも最も慎重を要する場面です。人員が減る夜間にいかに情報を集約し、危険を予見できるかが問われます。

夜勤タイムラインと各ポイントの要点

タイミング主な引き継ぎ内容要点
日勤→夜勤(夕方)当日の処置経過・夜間の報告基準・要観察患者優先患者を冒頭に集約・報告基準を数値で
夜勤中(必要時)急変時の経過・指示内容・家族連絡発生都度、記録と口頭で即時共有
夜勤→日勤(朝)夜間の変化・未解決事項・当日検査・回診予定全患者サマリと要観察患者の強調

夜勤引継ぎを強化する3つのポイント

  1. 優先患者を冒頭に集約する:全患者を同分量で伝えると重要情報が埋没します。要観察・急変リスクの患者を最初に伝えます。
  2. 報告基準を数値で示す:「悪化したら連絡」ではなく、「血圧180/110超・SpO2 93%以下で主治医へ即時連絡」など数値基準を明示します。
  3. 未解決事項を明確にする:夜間で対応しきれなかった事項は、次シフトが引き取れるよう「誰が・いつまでに・何を」を残します。

夜勤の引継ぎ漏れは、そのまま重大事故につながる可能性があります。引継ぎ不備が事故要因になる実例と再発防止策は、ヒヤリハット・事故防止で詳しく解説しています。


6. 分かりやすく伝えるコツ(5W1H・優先順位付け)

**分かりやすく伝えるコツは、事実と所感を分ける・5W1Hを意識する・結論ファーストで伝える・優先順位を付ける、の4点です。**事実と所感の混在は情報の信頼性を下げ、5W1Hの欠落は実施漏れにつながり、経緯から入ると聴き手の集中が切れます。NG例とOK例の対比で改善点を具体的に示せます。

申し送りの質は「構造」と「表現」で決まります。次シフトが迷わず行動できる表現を心がけます。

4つのコツ

  • 事実と所感を分ける:「バイタル安定」は所感、「血圧128/72・脈78」は事実です。事実を先に、所感は根拠付きで伝えます。
  • 5W1Hを意識する:When・Where・Who・What・Why・Howを揃えると、実施漏れを防げます。
  • 結論ファースト:結論・要点・経緯の順で伝えます。聴き手は最初の30秒で要点を把握できれば、以降を補強として処理できます。
  • 優先順位を付ける:全件を同分量で伝えず、重要情報を冒頭に集約します。

NG例→OK例の対比

場面NG例(改善前)OK例(改善後)
バイタル「だいたい安定しています」「血圧128/72・脈78・体温36.8(前回比で収縮期+10、14時測定)」
疼痛「痛がっていたので薬を出しました」「NRS7を訴え、14:30鎮痛薬内服、15:00 NRS3に軽減」
転倒リスク「気をつけて」「夜間単独歩行で転倒歴(前日22時)。離床時は職員同行」
報告基準「悪化したら連絡を」「血圧180/110超・SpO2 92%以下で即時報告」

表現力を高めるには

5W1HやNG/OK対比の書き方は、介護記録の書き方と共通しています。そのまま使える場面別の文例は申し送り例文集で、記入様式は申し送りテンプレートで公開しています。


7. ICT申し送りノート・電子カルテ連携による効率化

**ICT申し送りノートや電子カルテ連携は、口頭負荷を減らしつつ情報精度を保つ効率化手段です。**当日のバイタル・処置・検査結果をサマリ画面で一覧化し、口頭は変化と要アクション情報だけに限定します。ただし対話(質問・確認・雰囲気の共有)の価値は代替できず、電子カルテと口頭の組み合わせが標準とされています。

電子カルテやICT(情報通信技術)の普及は、申し送りを「口頭一辺倒」から「口頭+文書」へ移行させました。運用次第で効率も非効率も生むため、位置づけを整理する必要があります。

ICTが支える3つの層

  • 層1 電子カルテサマリ活用:当日のバイタル・処置・検査結果をサマリ画面で一覧化し、口頭は「変化と要アクション情報」だけに限定します。全量を口頭で読む運用をやめ、重複を排除します。
  • 層2 リーダー間引き継ぎ:まずリーダー同士が全員の要点を集約し、その後チーム内で個別に割り振る二段階方式です。急変リスクの患者はリーダーも同席し、報告基準をその場で確認します。
  • 層3 ベッドサイド入力:ハンディ端末でベッドサイドの観察をその場で入力し、申し送り時には反映済みの状態にします。観察から入力までのラグを無くし、情報の鮮度を担保します。

個人情報保護と運用上の注意

ICT申し送りノートを導入する際は、個人情報保護法(平成17年法律第57号)への対応が前提です。画面の自動ロック・生体認証・アクセス権限の設定を必須とし、録音・録画を含める場合は施設規程と本人・職員の同意を整えます。

AIは補助、判断は職員に

AIによる申し送り文の下書き生成や音声文字起こしは便利ですが、生成内容の事実確認・修正・署名は職員が行う必要があります。AIは負担軽減の補助であり、最終的な責任は職員にあります。AI・ICT活用の具体的な導入手順や最新ツール比較は、DX・AI活用で解説しています。


8. まとめ|申し送りはSBAR+ICT連携で質と効率を両立する

申し送りは、シフト間で安全なケアを継続し、事故を防ぐ中核業務です。本ガイドの要点を振り返ります。

  • 定義と目的:勤務交代時の情報共有で、ケアの継続性確保・事故防止・多職種連携が目的です。
  • 引き継ぎ・報告との違い:時系列定期業務(申し送り)・包括的業務(引き継ぎ)・一方通行(報告)を使い分けます。
  • 伝えるべき項目:状態・処置・留意事項・変更点・報告基準を、継続は変化・新規は全体像に絞って伝えます。
  • SBAR形式:S・B・A・Rの4要素で構造化し、要点を明確にします。
  • 夜勤引継ぎ:優先患者の集約と報告基準の数値化が鍵です。
  • ICT連携:電子カルテサマリと口頭の組み合わせが標準です。

目的別の関連記事

本ガイドは申し送り全体の総合ガイドです。目的別の深掘りは各専門記事へ。

関連テーマ

申し送りは利用者・患者の安全を守り、チームの連携を支える命綱です。基本構造の理解と目的別記事の活用で、情報共有の精度を高めながら業務負担を減らすことにつなげていただければ幸いです。


参考文献・出典

  • 保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第42条の2
  • 医療法(昭和23年法律第205号)第6条の10第2項(医療安全確保管理者)
  • 介護保険法(平成9年法律第123号)第41条/指定居宅サービス等の人員・設備及び運営に関する基準(平成15年厚労省令第34号)第19条
  • 厚生労働省健康局長通知「医療安全管理体制の整備のためのガイドライン」(平成24年3月30日 健政発第0330号第1号)
  • 厚生労働省『令和5年 看護職員の就業状況等に関する実態調査結果の概要』(令和6年7月公表)
  • 個人情報の保護に関する法律(平成17年法律第57号)