申し送りテンプレート|夜勤・診療科別のひな形と書き方コツ
申し送りのテンプレート・ひな形は、伝達漏れを防ぎ、次シフトが迷わず行動できる構造化フォーマットです。本記事では基本項目設計から、SBAR形式・夜勤引継ぎ・診療科別(循環器・消化器・脳神経)のテンプレート、Excel/紙フォーマットの設計ポイント、AIでテンプレートを生成するプロンプト例までを掲載します。空欄から埋めるまでの記入例とNG/OK対比付きで、明日の業務から使えます。

申し送り 総合ガイド|看護師の申し送り完全ガイド(SBAR例文5科付き)|申し送り 例文集
1. 申し送りテンプレートの基本構造(項目設計)
申し送りテンプレートとは、シフト交代時に受け持ち患者の状態・処置・留意事項を次シフトへ構造化して伝えるためのひな形です。保健師助産師看護師法第42条の2が定める療養上の世話の継続性を担保し、情報の断絶による医療事故を防ぐ役割を持ちます。有効なテンプレートは「患者基本情報・バイタル・処置・観察ポイント・報告基準」の5項目を固定枠で持ち、担当者ごとの記載ブレを防ぎます。厚労省の医療安全管理ガイドラインが求める標準化にも合致します。
テンプレートの価値は「何を・どの順番で書くか」を固定することにあります。項目枠が決まっていれば、書き手は中身の記述に集中でき、聴き手は同じ場所を見れば要点が揃います。
テンプレート必須の5項目
| 項目 | 役割 | 記載のポイント |
|---|---|---|
| 患者基本情報 | 対象の特定 | 氏名・年齢・性別・部屋番号・主治医 |
| バイタル・病状 | 現状の数値化 | 直近値・傾向・異常値と測定時刻 |
| 処置・投与 | 実施と予定 | 当日実施分・予定・保留を明示 |
| 観察ポイント | 次シフトの行動 | 何を見るか・どう動くかを具体化 |
| 報告基準 | エスカレ条件 | 数値基準(血圧・SpO2・体温など) |
良い項目設計の3条件
- 並び順が行動順: 悅ましい情報(急変・要観察)が前に来る構成にする。
- 記載量のメリハリ: 継続入院は「変化」に絞り、新規入院は「全体像」を厚くする。
- 報告基準は数値化: 「悪化したら」ではなく「血圧180/110超・SpO2 92%以下」等の客観基準を置く。
テンプレートは「書く側・読む側・監査する側」の三者にとって同じ位置に同じ情報がある状態を目指します。項目設計の考え方は、総合ガイドの申し送り 総合ガイドで基礎から解説しています。
2. SBAR形式テンプレート(汎用ひな形)
SBAR(エスバー)は、申し送りをS(状況)・B(背景)・A(評価)・R(提言)の4要素で構造化するコミュニケーションフレームです。元は米海軍の原子力潜水艦で生まれ、米国医療機関合同委員会(JCAHO)がハンドオフ標準手法として採用し、日本でも医療安全推進の文脈で普及しました。SBARをテンプレート化すると要点が明確になり、次シフトの判断材料が短時間で共有できます。緊急時から日常運用まで、現場で最も使われる汎用ひな形です。
SBARはSituation・Background・Assessment・Recommendationの頭文字です。SBARで組み立てた内容をSOAP形式で記録に落とす方法は、看護師の申し送り完全ガイドで詳述しています。
SBAR汎用テンプレート(空欄ひな形)
| 要素 | 記載内容 | 記入例(空欄) |
|---|---|---|
| S Situation | 誰が・いつ・何が起きているか1文 | 〇〇代〇性・〇〇Day〇・〇時〇分、____ |
| B Background | 診断・入院経緯・基礎疾患・前提 | 診断:__ 基礎:__ 内服:__ |
| A Assessment | 看護師の判断・バイタル傾向・リスク | __の可能性。__傾向 |
| R Recommendation | 次シフトへ依頼すること・報告基準 | 〇時〇分__予定。__で即時報告 |
SBARテンプレートを回す3つのコツ
- Sは1文30秒: 長い背景をSに混ぜない。現状だけを1文で。
- Aに所感と根拠を併記: 「不安」だけでなく「NRS8・レスキュー3回」など根拠を添える。
- Rに次シフトの行動: 「気をつけて」ではなく「2時間ごとに腸音確認」等の動作を指定する。
3. 夜勤引継ぎテンプレート(項目別フォーマット例)
夜勤の引継ぎテンプレートは、長時間勤務の情報減衰を防ぎ、日勤初動の判断精度を担保する項目別フォーマットです。日本看護協会が勤務交代時の標準的な伝達項目として挙げる「夜間の異常有無・要観察患者・朝の検査予定・当日の主治医回診予定・報告基準」を固定枠で持ちます。病棟全体サマリと個別患者カードを分離し、全患者同分量の罠を避けることで、重要情報が埋没するのを防ぎます。
夜勤は1シフト内に複数の時間帯(準夜・深夜・早朝)を含むため、情報の鮮度管理が鍵になります。「何時の情報か」を項目内に明示すると、引き継ぎの信頼性が上がります。
夜勤引継ぎテンプレート(病棟全体サマリ)
| 項目 | 記載内容 | 記入例 |
|---|---|---|
| 患者数 | 入院/空床/新規/退院予定 | 入院32名・空床2・新規1・退院予定1 |
| 夜間異常 | あり/なし・該当患者 | あり2名(302室発熱・405室不眠) |
| 要観察患者 | 優先度付きリスト | ①302室発熱 ②501室転倒寸前 ③603術後 |
| 検査予定 | 当日実施分・準備事項 | 302室血液採血・405室心電図(空腹) |
| 回診予定 | 主治医回診・面会 | 〇〇医師午後回診・302室妻19時面会 |
| 報告基準 | 夜間のエスカレ条件 | T38.5℃超・SpO2 92%以下で当直医へ |
個別患者カード(夜勤→日勤)
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 患者ID | 302-1 山田花子(80F) |
| 夜間経過 | 22時解熱剤使用、現在T37.4℃ |
| バイタル(早朝) | BP124/70 HR72 T37.4 SpO2 95%(6:00) |
| 実施処置 | 解熱剤・補水300mL |
| 観察ポイント | 解熱の持続・水分摂取量 |
| 報告基準 | T38.0℃超・SpO2 93%以下 |
夜勤テンプレートのNG/OK対比
❌ NG: 「夜間特に変化なし、朝も安定しています」 ✅ OK: 「夜間異常2名(302室発熱37.4℃・405室不眠で睡眠薬追加)。早朝バイタルは全員安定。302室は解熱剤でT38.2→37.4℃。T38.0℃超で当直医へ報告」
4. 診療科別テンプレート(循環器/消化器/脳神経の留意点)
診療科別テンプレートは、各科の疾患特性に合わせて観察項目と報告基準を特化したひな形です。循環器では体重・尿量・呼吸状態、消化器外科では排ガス・排便・腹部所見、脳神経ではNIHSSスコア・痙攣・片麻痺の左右差が早期察知の鍵になります。これらを固定枠に組み込むことで、科特有の見落としを防ぎます。根拠として、厚労省「医療安全管理体制の整備のためのガイドライン」が求める診療科ごとのリスク管理に合致します。
汎用テンプレートに科ごとの観察ポイントを追加するだけで、専門性の高い引継ぎになります。各科のSBAR例文は看護師の申し送り完全ガイドに5科分をまとめています。
① 循環器内科:テンプレート追加項目
| 追加項目 | 記載ポイント | 報告基準例 |
|---|---|---|
| 体重 | 日々の増減(同時刻・同衣服) | 1日+1.0kg/3日+2.0kg超 |
| 尿量 | 時間尿・利尿剤反応 | 100mL/8h以下 |
| 呼吸状態 | 呼吸数・SpO2・肺音 | 呼吸数24超・SpO2 92%以下 |
② 消化器外科:テンプレート追加項目
| 追加項目 | 記載ポイント | 報告基準例 |
|---|---|---|
| 排ガス・排便 | 有無・時刻・性状 | 術後Day3で排ガスなし |
| 腹部所見 | 膨満・腸音・圧痛 | 腹部膨満増強・嘔吐時 |
| 離床状況 | 歩行距離・回数 | 離床減少が続く場合 |
③ 脳神経外科/内科:テンプレート追加項目
| 追加項目 | 記載ポイント | 報告基準例 |
|---|---|---|
| 意識レベル | JCS・GCSの推移 | JCS1桁悪化 |
| 神経症状 | 片麻痺MMT・構音障害 | MMT1段階低下・痙攣 |
| NIHSS | スコアと変動 | スコア上昇時 |
5. 記入例(空欄→埋めた状態の実例)
申し送りテンプレートは、空欄のひな形を実際の患者情報で埋めることで真価を発揮します。本章は循環器内科のケースで、空欄テンプレートがどのように埋まるかを対比で示します。記入の際は「事実(数値・時刻)」と「所感(判断)」を分け、報告基準を数値化することが、厚労省の医療安全ガイドラインが求める客観的記録の要件を満たします。次シフトが行動できるレベルまで具体化するのが記入の目標です。
【場面】循環器内科・体液過剰疑い
【利用者】 70代女性・拡張型心筋症
【状況】 日勤→準夜への引継ぎ。体重が3日で増加し、呼吸状態に変化がある。
空欄テンプレート
| 要素 | 空欄 |
|---|---|
| S | _______ |
| B | _______ |
| A | _______ |
| R | _______ |
記入済みテンプレート
| 要素 | 記入例 |
|---|---|
| S | 70代女性・拡張型心筋症・14:30、呼吸数24・SpO2 92%(room air) |
| B | NYHAⅢ度・内服カルベジロール・フロセミド。朝尿量200mL/8h・BNP980 |
| A | 体液過剰に伴う肺うっ血進行の疑い。利尿剤反応低下の可能性 |
| R | 15:00フロセミド静注の効果判定(尿量・体重)・半座位維持。SpO2 90%以下・呼吸数28超で即時報告 |
記入時のNG/OK対比
❌ NG(S): 「少し呼吸が苦しそうです」 ✅ OK(S): 「14:30、呼吸数24・SpO2 92%(room air)、下肢浮腫増強」
❌ NG(R): 「悪化したら連絡してください」 ✅ OK(R): 「SpO2 90%以下・呼吸数28超で即時報告」
より多様な場面の例文が必要な方は、申し送り 例文集で入門から応用までのパターンを確認できます。
6. Excel/紙フォーマットの設計ポイント
Excelや紙の申し送りフォーマットは、運用環境に合わせて設計することで定着します。電子カルテ未導入の施設やタブレット導入前の移行期では、紙フォーマットが依然として標準です。設計の要点は、1患者1行/1カードの情報密度、報告基準の固定欄、そして改訂履歴の管理です。個人情報保護法(平成17年法律第57号)の観点から、紙媒体は施錠保管・廃棄ルールを規程化し、Excelはアクセス権限とパスワード保護を必須とします。
フォーマットは「作ること」より「運用に耐えること」が重要です。現場の意見を取り入れ、半年に1回の改訂サイクルを回すと定着しやすくなります。
Excelフォーマットの設計チェックリスト
- 1患者1行: 行に患者、列に項目を並べ、フィルタで要観察患者を絞れるようにする。
- 報告基準欄の固定: 科別の報告基準を固定セルに置き、毎回入力しない構造にする。
- 条件付き書式: 異常値(SpO2 92%以下など)を自動で赤表示にし、見落としを防ぐ。
- 改訂履歴: シート下部に改訂日と内容を記録し、古い版と混在しないようにする。
- アクセス権限: 共有ドライブで編集権限を限定し、閲覧のみの職員を明確にする。
紙フォーマットの設計チェックリスト
- 1患者1カード: 表裏で「サマリ/詳細」を分け、追加記入の余地を残す。
- チェック式項目: バイタル異常の有無などは☐枠で素早く記入できるようにする。
- 報告基準の印字: 科別基準を用紙の端に常時印字し、都度探す手間を省く。
- 施錠保管: 申し送り後は鍵付きキャビネットへ保管し、廃棄はシュレッダー処理とする。
- 版管理: 用紙右下にバージョン番号を印字し、改訂前後の混用を防ぐ。
Excel/紙フォーマット比較
| 比較項目 | Excel | 紸 |
|---|---|---|
| 編集・集計 | フィルタ・関数で集計可能 | 手書きのため集計は手作業 |
| 情報更新 | リアルタイム反映 | 転記の手間が発生 |
| セキュリティ | アクセス権限・パスワード | 施錠保管・廃棄ルール |
| 導入ハードル | 端末・共有環境が必要 | 印刷のみで導入容易 |
| 改訂コスト | ファイル差し替えのみ | 旧版の回収・新版印刷 |
7. AI(ChatGPT/Claude)でテンプレート生成するプロンプト例
生成AI(ChatGPT・Claude等)を活用すると、自施設の申し送りテンプレートを短時間で作成できます。AIに項目構成・診療科・報告基準を指示すれば、SBAR構造化テンプレートや科別ひな形を出力します。注意点は、出力されたテンプレートをそのまま運用せず、施設の規程・法令(介護保険法・医療法)と照合し、個人情報を含む実データを入力しないことです。AIは「ひな形作成」を支援し、最終判断は人が担うのが安全な運用です。
AI生成を安全に使う鉄則は、実患者データを入力しないことです。患者名・カルテ番号・固有の病状を除いた上で、構造と項目だけを依頼します。
プロンプト例1:SBAR汎用テンプレートの生成
あなたは看護師の申し送り標準化を担当する医療安全推進委員です。
以下の条件で、病棟で使える「SBAR形式の申し送りテンプレート」を
Markdownの表形式で作成してください。
条件:
- 対象:急性期一般病棟の継続入院患者
- 各要素(S/B/A/R)に「記載内容」と「記入例(空欄)」の2列を持たせる
- 報告基準は数値で具体化できるよう例を併記する
- 患者の個人情報は一切含めない
プロンプト例2:夜勤引継ぎテンプレートの生成
夜勤(準夜→深夜→日勤)の引継ぎに使うテンプレートを作成してください。
要件:
- 病棟全体サマリ(患者数・夜間異常・要観察・検査予定・回診・報告基準)
- 個別患者カード(基本情報・夜間経過・早朝バイタル・処置・観察・報告基準)
- 各項目に記入例を1行ずつ添える
- 報告基準は客観的数値(体温・血圧・SpO2)で示す
プロンプト例3:診療科別テンプレートの生成
以下の3診療科について、汎用テンプレートに追加すべき
「観察項目」と「報告基準」を表で整理してください。
- 循環器内科
- 消化器外科
- 脳神経外科/内科
出力形式:科/追加項目/記載ポイント/報告基準例の4列
実在の患者データ・固有名詞は使わないこと。
AI生成テンプレートを運用に乗せる3ステップ
- ひな形を作る: AIで構造案を出力し、項目の過不足を委員会で確認する。
- 法令照合: 介護保険法・医療法・個人情報保護法と照合し、記録義務項目の漏れを防ぐ。
- 試行運用: 1病棟で2週間試行し、現場の意見で改訂してから全棟展開する。
AI生成の基礎やリスク管理は、看護師の申し送り完全ガイドのAIツール章で解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q1. 申し送りテンプレートは Excel と紙、どちらが良いですか?
施設のICT環境によります。電子カルテ・共有ドライブが整っていればExcelが集計・更新で優位です。一方、タブレット導入前や停電リスクがある現場では紙が堅牢です。移行期は紙ベースで項目を洗練させ、安定してからExcelへ移行する流れが現実的です。
Q2. テンプレートに報告基準を書く理由は何ですか?
報告基準を数値で明示することで、「悪化したら連絡を」という曖昧な引継ぎを防げます。「血圧180/110超・SpO2 92%以下」等の客観基準があると、次シフトがいつエスカレートすべきか迷わず、報告遅延による事故を未然に防げるためです。
Q3. SBAR以外に使えるテンプレート構造はありますか?
SBARのほか、ISBAR(Identify=本人確認を追加)、SHARED(WHO提唱)、5W1H構造などが実用例としてあります。日本の急性期病棟ではSBARが最も普及しています。まずSBARで標準化し、自施設の課題に応じて要素を追加するのが効果的です。
Q4. AIで作ったテンプレートをそのまま運用しても良いですか?
そのまま運用はおすすめしません。AIが出力したひな形は、施設の規程・法令と照合し、個人情報を含む実データを入力せずに運用するのが安全です。AIは構化作成を支援し、最終的な判断・承認は人が担う運用をおすすめします。
まとめ:構造化テンプレートで申し送りの質と速度を両立する
申し送りテンプレートは、項目と順序を固定することで伝達漏れを防ぎ、次シフトの初動を速める構造化フォーマットです。基本5項目で骨組みを作り、SBARで構造化し、夜勤・診療科別に特化することで、現場に定着するひな形になります。Excel/紙の設計ポイントとAI生成プロンプトを組み合わせれば、明日の業務から運用を始められます。
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申し送りの基本定義・目的は申し送り 総合ガイド、SBAR例文5科は看護師の申し送り完全ガイド、場面別の例文は申し送り 例文集をご覧ください。本記事のテンプレートが、現場の引継ぎ精度向上の一助となれば幸いです。