SOAPとは?S・O・A・Pの意味と記録の書き方完全ガイド
SOAP(ソープ)とは、利用者の状態を**S(主観的情報)・O(客観的情報)・A(アセスメント)・P(計画)**の4要素で整理する記録形式です。介護・看護・リハビリの現場で広く使われ、介護記録の標準的な書き方として定着しています。本記事では各要素の意味と書き方、POMRの由来、職種別の使い分けまでを網羅的に解説します。場面別の具体例はSOAPの書き方ガイドをご覧ください。
1. SOAPとは?4要素の定義と記録形式の全体像
SOAP(ソープ)は、1968年にアメリカの医師Lawrence Weedが提唱した問題志向型医療記録(POMR)に由来する記録形式で、情報を主観(S)・客観(O)・アセスメント(A)・計画(P)の4要素に構造化します。日本では介護保険法に基づく介護記録や医療法施行規則に基づく診療録・看護記録の標準手法として普及しており、厚生労働省「介護記録の適切な作成・保存について」(老企第27号)も客観的事実に基づく記録を求めています。
SOAPは英語の頭文字をとった名称で、4つの要素で構成されます。以下の表は全体像をまとめたものです。
| 要素 | 英語 | 日本語 | 記載内容 |
|---|---|---|---|
| S | Subjective | 主観的情報 | 利用者・家族の言葉による訴え・要望 |
| O | Objective | 客観的情報 | 職員が観察・測定した事実(数値・行動) |
| A | Assessment | アセスメント | SとOから導き出す専門的判断 |
| P | Plan | 計画 | 今後の支援方針・具体的実施内容 |
SOAPの最大の特徴は、観察した事実(O)と職員の判断(A)を明確に分けて記載する点です。この分離により、記録を読む人が「どこまでが事実で、どこからが判断か」を一目で区別できます。
なぜ4要素に分けるのか
記録を4要素に分ける目的は、思考プロセスを可視化することです。事実と判断が混ざった記録では、後から検証が困難になります。SOAP形式を使えば、根拠(S・O)に基づく判断(A)と計画(P)の連動性が明確になります。多職種で情報を共有する際にも、統一された構造が認識のズレを防ぎます。
完成例:1つのケア場面をSOAPで記録する
【場面】食事(一部介助) 【利用者】80代女性・右片麻痺(軽度) 【状況】昼食時に自助での摂取が難しく、食事時間が延長している 【記録例】
- S:「自分で食べたいけれど、手が上手く動かない」と話された
- O:昼食摂取量はご飯3割・副菜2割。食事時間35分(通常20分)。右手でスプーンを持つ際に震えあり。体重は前月比−0.8kg
- A:右上肢の筋力低下により自助摂取が困難になりつつある。体重減少を踏まえると低栄養リスクも考慮が必要と判断する
- P:①スプリング付きスプーンの導入をOTに相談(担当:鈴木・今週末まで)②介助量を5割に調整③週2回の体重測定を実施し1ヶ月後に再評価
2. S(Subjective)主観的情報の書き方
S(Subjective=主観的情報)には、利用者本人や家族の言葉による訴え・感想・要望を記載します。「痛い」「食べたい」などの発言を、職員の解釈を交えずにそのまま引用するのが基本です。厚生労働省の介護記録に関する指針でも利用者の意向を的確に反映した記録が求められており、Sは本人の意思を尊重する根拠となります。
Sには「利用者の言葉」を記録します。職員が感じた印象ではなく、発話内容そのものを引用するのが原則です。発言は「」付きで書き、可能な範囲で強さや頻度を数値化します。
Sの書き方のポイント
- 利用者の言葉を「」付きでそのまま引用する
- 「〜のようだ」「〜と思われる」という職員の解釈は避ける
- 痛みや強さは**NRS(0〜10の数値評価)**などで数値化する
❌ NG例: 元気がないようだ。 ✅ OK例: 「お腹が空かない」と話された。
場面別のSの書き方を深く知りたい方には、SOAPの書き方ガイドの例文20パターンがおすすめです。
3. O(Objective)客観的情報の書き方
O(Objective=客観的情報)には、職員が五感で確認した事実を記載します。血圧・体温・食事摂取量・歩行時間など、測定値や目視事実を数値・時間・回数を含めて具体的に書くのが基本です。介護保険法に基づくサービス提供記録では客観的事実に基づく正確な記載が要件とされており、Oは記録の信頼性を支える根幹となります。
Oは「誰が見ても同じ事実として確認できる情報」です。「元気がない」「不穏」といった職員の主観ではなく、再現性のある事実を記載します。
Oの書き方のポイント
- 数値・時間・回数を必ず含める
- 測定値(血圧・体温・SpO2・体重など)を記載する
- 行動・状態は具体的に描写する(「不穏」ではなく「15分間に立ち上がりを8回繰り返す」)
❌ NG例: 食事をあまり食べなかった。 ✅ OK例: 昼食摂取量はご飯3割・副菜1割。食事時間35分(通常25分)。右手でスプーンを持つ際に震えを観察。
ADL(日常生活動作)の評価では、FIMやBarthel Indexなどの客観的尺度をOに組み込むと、状態の変化を数値で追えるようになります。
4. A(Assessment)アセスメントの書き方(専門的判断)
A(Assessment=アセスメント)には、SとOを統合して導き出した専門的判断を記載します。事実の羅列ではなく「SとOから何が言えるか」を因果関係で示すのが基本で、根拠に基づく推論が求められます。看護記録では医師の診断名をAに看護師の判断として書かず「医師より〇〇と診断」と事実として記載するなど、責任範囲の境界を明確にする役割も担います。
AはSOAPの中で最も書くのが難しい要素です。事実(O)を並べるだけではアセスメントになりません。「〇〇だから〇〇と判断する」という論理を明示します。
Aの書き方のポイント
- 「S+O=A」の論理を示す(根拠→判断)
- 個人的な推測ではなく、専門的知識に基づく推論を書く
- 複数の可能性がある場合は鑑別を示す
❌ NG例: 元気がない。 ✅ OK例: 食事摂取量低下(3割)と体重減少(−1.2kg/月)から、低栄養リスクの進行が疑われる。
アセスメント力を高めるには、ケアプランの目標との連動を意識すると、判断に一貫性が生まれます。
5. P(Plan)計画の書き方
P(Plan=計画)には、今後の支援方針と具体的実施内容を記載します。「誰が・いつまでに・何をするか」を明確にし、再評価のタイミングを併記するのが基本です。介護保険法に基づく居宅サービス計画や施設サービス計画では計画と実施記録の連動が求められており、Pは次のケアにつなげるための具体的行動指針となります。
Pは「次に何をするか」を具体的に書くセクションです。「様子を見る」のような曖昧な表現は避け、行動可能な内容にします。
Pの書き方のポイント
- **「誰が・いつまでに・何を」**を明記する
- 再評価のタイミング(1週間後・次回シフトなど)を含める
- 問題リストやケアプランと連動させる
❌ NG例: 様子を見る。 ✅ OK例: ①明日から食事介助を5割に増やす(担当:田中)②1週間後に摂取量を再評価③3割以下の場合は主治医に報告。
計画を立てる前提となるケアプランの全体像も、併せて理解しておくことをおすすめします。
6. SOAPの歴史:POMR(問題志向型医療記録)とWeed(1968)の提唱
SOAPは、1968年にアメリカの医師Lawrence Weed(ローレンス・ウィード)が提唱した問題志向型医療記録(POMR: Problem-Oriented Medical Record)の核となる構造です。Weedは論文「Medical records that guide and teach」(N Engl J Med. 1968;278:593-600)で、疾患ではなく患者の「問題」ごとに記録を整理する手法を発表し、SOAPはその問題別経過記録(Progress Note)の書式として定着しました。
POMRとは
POMR(問題志向型医療記録)は、患者の抱える問題をリスト化し、各問題ごとにSOAPで経過を記録する方式です。従来の「データベース志向」の記録(検査値や診断名を時系列で並べる方式)に対し、「問題志向」という新しい視点を提示しました。この発想の転換が、現代の多職種連携を支える記録文化の起点となっています。
日本への普及
日本では1980年代以降、看護過程を可視化する手法としてSOAPが導入されました。2000年の介護保険法施行以降は、介護記録の標準形式としても広く普及しています。現在では介護・看護・リハビリの多職種連携を支える共通言語として、ほぼ全ての現場で使われるようになりました。
7. 職種別SOAPの使い分け概要(介護・看護・リハビリ)
SOAPは介護・看護・リハビリで共通して使われますが、各職種で記載の重心が異なります。介護は日常生活の支援場面、看護は医療的判断と責任範囲の境界、リハビリは機能評価と訓練目標が、それぞれAとPの中核になります。職種ごとの特徴を理解し、専門の書き方を参照することが、現場での記録精度向上につながります。
職種別の特徴比較
| 職種 | Oの中核 | Aの重心 | Pの特徴 |
|---|---|---|---|
| 介護 | 食事・排泄・入浴等のADL場面 | 生活支援上の課題 | ケアプラン連動の支援方針 |
| 看護 | バイタル・検査値・症状 | 看護判断と責任範囲の境界 | 医師への報告基準・オーダー実施 |
| リハビリ | 関節可動域・筋力・ADL評価 | 機能障害と訓練目標の設定 | 段階的訓練計画と再評価 |
各職種の詳細ガイド
- 介護職の方: 場面別例文20パターンをまとめた介護SOAPの書き方ガイドとSOAP例文集をご覧ください。
- 看護師の方: 責任範囲の境界や症状別テンプレを解説した看護記録SOAPをご覧ください。
- リハビリ職の方: 機能評価と訓練計画に焦点を当てたリハビリSOAPをご覧ください。
まとめ
SOAP記録は、利用者の状態をS・O・A・Pの4要素で構造化し、事実と判断を明確に分ける記録形式です。4要素それぞれの役割を理解し、場面に応じた使い分けを身につければ、監査にも耐えうる質の高い記録が書けます。さらに深く学ぶには、以下の関連記事の活用をおすすめします。
関連トピックとして、介護記録の総合ガイド、ADL・FIMの評価、ケアプランの全体像も併せてご覧ください。
参考文献・出典
- 厚生労働省老健局「介護記録の適切な作成・保存について」(老企第27号、平成18年3月)
- 介護保険法(平成9年法律第123号)
- 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第45号)別表第二
- Weed LL. "Medical records that guide and teach." N Engl J Med. 1968;278(11):593-600, 278(12):652-657.