SOAP(ソープ)記録の例文20選を、介護・看護・リハビリの職種別・場面別のマトリクスで紹介します。書き方の解説は「SOAPの書き方ガイド」に譲り、本記事はコピーして使える例文テンプレートに特化しました。S・O・A・Pの書き分けと、AIで例文を生成するプロンプト例も収載しています。

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1. SOAP例文を書く前の基本(3分まとめ)
SOAPは利用者の状態をS(主観的情報)・O(客観的情報)・A(評価)・P(計画)の4要素で整理する記録形式です。厚生労働省「介護記録の適切な作成・保存について」(老企第27号)は客観的事実に基づく記録を求めており、SOAPはこの要件を満たす標準的手法として位置づけられています。書き方の詳細は「SOAPの書き方完全ガイド」をご覧ください。本記事はその例文編です。
各要素の役割を一文で押さえます。書き出しの型を覚えれば、後は場面に当てはめるだけです。
| 要素 | 意味 | 例文の書き出しの型 |
|---|---|---|
| S | 主観的情報(利用者・家族の言葉) | 「〇〇」と話された |
| O | 客観的情報(測定値・目視の事実) | 体温〇〇℃、摂取量〇割 |
| A | 評価(S+Oの根拠に基づく判断) | 〇〇と〇〇から、〇〇が疑われる |
| P | 計画(誰が・いつまでに・何を) | ①明日から〇〇(担当:田中) |
Sには「解釈」を混ぜない、Oには「数値」を入れる、Aは「事実の羅列」で終わらない、Pは「様子を見る」を避ける——この4原則が質の高い例文の土台になります。本章は要点のみとし、Aの組み立て方や監査対応は書き方ガイドに譲ります。
2. 例文マトリクス20選:職種×場面の一覧
本記事の中核です。介護8例・看護6例・リハビリ6例の計20例を、職種と場面のマトリクスで一覧化しました。各例のS・O・A・Pを一行に凝縮し、そのまま記録の下書きに使えます。数値・場面は説明用の架空設定です。職種別の書き方やAI活用は、介護・看護・リハビリの各解説記事をご覧ください。
| # | 職種 | 場面 | S(主観) | O(客観) | A(評価) | P(計画) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 介護 | 食事・むせ込み | 「水で詰まる」 | 水分時むせ2回、SpO2 95→92% | 誤嚥リスク上昇 | とろみ追加・ST連携 |
| 2 | 介護 | 食事・低栄養 | 「食欲がない」 | 摂取量3割、体重−1.2kg/月 | 低栄養進行 | 形態調整・月1体重測定 |
| 3 | 介護 | 排泄・夜間頻尿 | 「夜何度も起きる」 | 夜間排尿4回、睡眠3時間 | 夜間転倒リスク | ポータブルトイレ設置 |
| 4 | 介護 | 排泄・失禁 | 「間に合わなかった」 | 下着に尿もれ、陰部発赤 | 排泄自立度低下 | 2時間誘導・皮膚保護 |
| 5 | 介護 | 入浴・機械浴 | 「すっきりした」 | 機械浴20分、背部発赤1cm | 圧迫由来発赤 | クッション厚手化 |
| 6 | 介護 | 入浴・拒否 | 「今日はいやだ」 | 入浴拒否、清拭へ切替 | 気分変動・強制NG | 清拭で代替・午前声かけ |
| 7 | 介護 | BPSD・徘徊 | 「家に帰る」 | 夕方フロア5周、HR88 | サンダウニング | 夕方活動提案・照明確保 |
| 8 | 介護 | BPSD・妄想 | 「盗まれた」 | 財布開閉8回/15分 | 被害妄想BPSD | 共感対応・透明ケース |
| 9 | 看護 | 発熱・感染症 | 「寒気がする」 | 38.5℃、水分300ml/6h | 脱水進行リスク | 解熱剤1h判定・39℃超報告 |
| 10 | 看護 | 疼痛・術後 | 「ズキズキ痛い」NRS7 | 前屈歩行、BP150/92 | 創部炎症性疼痛 | 30分NRS再評価 |
| 11 | 看護 | 呼吸苦・COPD | 「息苦しい」 | RR28、SpO2 92%、起坐呼吸 | 気道クリアランス障害 | 2L酸素・吸引・SpO2 90%未満で報告 |
| 12 | 看護 | 血圧変動 | 「ふらつく」 | 起立時BP 140→125低下 | 起立性低血圧・転倒リスク | ゆっくり起立指導・報告 |
| 13 | 看護 | 浮腫・心不全 | 「靴がきつい」 | 下腿浮腫+、体重+2kg/週 | 体液貯留疑い | 水分塩分管理・体重毎日 |
| 14 | 看護 | 創部・術後 | 「傷が痛む」 | 創部発赤・渗出液あり | 創感染疑い | 医師報告・ドレッシング交換 |
| 15 | リハ | ROM訓練・拘縮 | 「肩が上がらない」 | 肩屈曲90°(先月120°) | 拘縮進行 | 自動介助ROM・週3回 |
| 16 | リハ | 歩行・TUG改善 | 「歩くのが不安」 | TUG16秒→13秒 | 歩行能力改善維持 | TUG週1測定・転倒予防 |
| 17 | リハ | 歩行・屋外 | 「外の段差が怖い」 | 屋外10m歩行・段差乗越可 | 屋外歩行自立度UP | 階段練習追加 |
| 18 | リハ | ADL・更衣 | 「ボタンが止めにくい」 | 上衣着脱5分・ボタン困難 | 巧緻性低下 | 紐靴→マジック・ボタン練習 |
| 19 | リハ | ADL・食事 | 「自分で食べたい」 | スプーン自立・摂取8割 | 自助具で自立維持 | スプリングスプーン導入検討 |
| 20 | リハ | 嚥下ST訓練 | 「むせやすい」 | RSST陽性・水分むせ | 嚥下機能低下 | 間接訓練(アイスマッサージ) |
マトリクスは検索エンジンのAI Overviewsにも引用されやすい形式です。自施設の利用者属性に合わせて数値を差し替えれば、すぐ実務に使えます。
3. 介護SOAPの例文(食事・排泄・入浴・BPSD)
介護現場のSOAPでは、食事・排泄・入浴・BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia:認知症の周辺症状)の場面で記録頻度が高くなります。介護保険法に基づくサービス提供記録として、利用者の安全と尊厳に関わる事実を客観的に残すことが求められます。ここでは4場面のうち記録難易度が高い「むせ込み」「失禁」「入浴拒否」「被害妄想」を詳しく示します。
例文A:食事(むせ込み・誤嚥リスク)
【場面】 昼食介助(見守り) 【利用者】 80代女性、脳梗塞後遺症・軽度嚥下障害 【状況】 水分摂取時にむせ込み、SpO2が一時的に低下した
【記録例】
- S:「お茶で詰まってしまった」と話された
- O:昼食摂取量はご飯7割・副菜全量。水分摂取時にむせ込み2回。SpO2:96%→92%(5分後に95%へ回復)。食事時間28分(通常20分)
- A:むせ込みとSpO2の一時的低下から、水分での誤嚥リスクが上昇していると判断する
- P:①明日から水分に軽度とろみ剤を添加(担当:田中)②言語聴覚士(ST)に嚥下評価を依頼(担当:鈴木・今週中)③毎食のSpO2測定を3日間継続
❌ NG(A):むせていて心配だ。 ✅ OK(A):むせ込み2回とSpO2 4ポイント低下の2点から、水分誤嚥リスクの上昇を判断する。
排泄・入浴・BPSDの詳細例文は、それぞれマトリクス4〜8行をベースに数値を埋めれば完成します。失禁事例では「陰部発赤」など皮膚トラブルの有無をOに必ず入れてください。入浴拒否は強制せず清拭で代替した判断根拠をAに残すのが監査対応のポイントです。場面別の網羅例は「介護SOAPの書き方」の例文20パターンも併読をおすすめします。
4. 看護SOAPの例文(発熱・疼痛・呼吸苦)
看護SOAPの発熱・疼痛・呼吸苦は、状態悪化に直結するため正確な記録が不可欠です。医療法施行規則(昭和23年厚生省令第45号)が定める診療録の要件を踏まえ、Sには患者の言葉、Oには測定値、Aには看護判断(医師の診断名は含まない)、Pには報告基準を明示します。責任範囲の境界は「看護SOAPの書き方」で詳述しています。本記事は例文に絞ります。
例文B:疼痛(術後・がん性疼痛にも応用可)
【場面】 術後Day1、創部疼痛の評価 【利用者】 60代男性、開腹術後 【状況】 体位変更時の疼痛が強く、離床が滞っている
【記録例】
- S:「お腹の傷がズキズキ痛い、動かすと強くなる」(NRS 7)
- O:前屈み歩行。創部周囲に筋緊張あり。表情苦悶状。血圧150/92、脈98/分。鎮痛薬9:00投与
- A:術後創部の炎症性疼痛で、体位変更で増強し活動制限の要因となっていると判断する
- P:①30分後にNRS再評価②安楽体位(半側臥位)を工夫③NRS上昇または変化なき場合は主治医へ報告
❌ NG(S):痛がっている。 ✅ OK(S):「傷がズキズキ痛い、動かすと強くなる」(NRS 7)と訴えられた。
看護記録ではAに医師の診断名を書かない点に注意が必要です。「肺炎が悪化している」ではなく「痰量増加とSpO2低下から、気道クリアランス障害が疑われる」と看護判断で書くのが正解です。発熱時は解熱剤の効果判定タイミング、呼吸苦時はSpO2の報告基準(90%以下で即時報告など)をPに必ず含めることをおすすめします。症状別テンプレ10種は「看護SOAPの書き方」に詳しいです。
5. リハビリSOAPの例文(ROM訓練・歩行練習・ADL訓練)
リハビリ(PT・OT・ST)のSOAPは、OにROM・MMT・TUG・FIMなどの測定値を必ず記載し、AをICF(国際生活機能分類)の枠組みで臨床推論するのが特徴です。医師法第24条に基づく診療録の一部として、実施した評価・訓練と結果・次回目標を記録します。疾患別の臨床推論は「リハビリSOAPの書き方」を参照し、本記事はROM・歩行・ADLの実践例文に絞ります。
例文C:歩行練習(屋外・段差)
【場面】 屋外歩行練習(PT実施) 【利用者】 70代男性、変形性膝関節症・術後3か月 【状況】 退院に向け屋外歩行と段差昇降を練習
【記録例】
- S:「外の段差が怖い、でも自分で歩きたい」と話された
- O:屋外10m歩行22秒(先月28秒)。段差(15cm)の昇降は右手すり使用で自立。TUG:16秒→13秒(2週間で3秒短縮)。膝伸展MMT4
- A:歩行速度とTUGの改善から下肢筋力とバランスが向上し、屋外歩行の自立度が上がったと評価する。段差への不安は心理的要因が残る
- P:①週2回の階段練習(5段)を追加②次回TUG測定(1週間後)③退院後の外出範囲を本人と目標設定
❌ NG(O):歩き方がだいぶ良くなった。 ✅ OK(O):屋外10m歩行22秒(先月28秒)、TUG 16秒→13秒、段差15cm昇降が手すり使用で自立。
ROM訓練では「肩屈曲90°(先月120°)」のように前回値との比較をOに入れます。ADL訓練では更衣・食事動作の所要時間と自助具の有無を記録し、巧緻性低下の程度を数値で示すことをおすすめします。STの嚥下訓練ではRSSTや水分形態をOに入れ、間接訓練(アイスマッサージなど)の実施内容をPに具体化します。
6. S・O・A・Pの書き分け:NG例とOK例の対比
SOAP記録で監査指摘が多いのは「Sに解釈が混じる」「Oに数値がない」「Aが事実の羅列」「Pが抽象的」の4パターンです。厚労省老企第27号が求める客観的記録を実現するには、各要素の役割を厳格に書き分ける必要があります。本節では4要素それぞれのNG例→OK例を対比で示します。
| 要素 | ❌ NG(改善前) | ✅ OK(改善後) |
|---|---|---|
| S | 元気がないようだ。 | 「だるくて動きたくない」と話された。 |
| O | 食事をあまり食べなかった。 | 昼食摂取量はご飯3割・副菜1割。食事時間35分。 |
| A | 様子がおかしい。 | 摂取量3割と体重−1.2kg/月から、低栄養の進行を判断する。 |
| P | 様子を見る。 | ①明日から食事形態を軟飯に変更(担当:田中)②1週間後に摂取量を再評価。 |
要素ごとの書き分けのコツ
- S:利用者の言葉を「 」付きで引用します。「元気がない」は職員の解釈なのでNGです。訴えの強さは可能な限り数値化します(疼痛はNRS、発熱は体温)。
- O:測定値・時間・回数・目視事実だけを書きます。「あまり」「だいぶ」といった主観表現は避け、数字で示します。
- A:SとOを根拠に「〇〇だから〇〇」と因果を書きます。事実の羅列で終わらせないのが質の分かれ目です。
- P:「誰が・いつまでに・何を」の3要素を入れます。「様子を見る」「気をつける」は具体性がないためNGです。
この4パターンの指摘は、介護・看護・リハビリの職種を問わず共通して出現します。記録完了前に本表を1分で点検するだけで、監査指摘の大部分を予防できます。
7. AIでSOAP記録の例文を生成するプロンプト例
2026年現在、ChatGPTやClaudeに場面情報を入力すれば、SOAP形式の例文下書きを即座に生成できます。個人情報を伏せた上で事実を箇条書き入力し、出力は必ず事実確認することが前提です。本節では「1場面の例文バリエーションを一度に生成する」プロンプト例を紹介します。AIツールの比較は「SOAPの書き方ガイド」のAI章をご覧ください。
例文バリエーションを生成するプロンプト(コピー&ペースト可)
あなたは介護・看護記録の専門家です。
以下のケア場面について、SOAP形式の記録例文を3パターン作成してください。
3パターンは「楽観的経過」「問題発生」「経過観察」の切り替えで変えてください。
【場面】排泄(午後のトイレ誘導)
【利用者属性】80代女性、脳梗塞後遺症・右片麻痺(軽度)、認知症(軽度)
【観察事実】
- トイレまで歩行器で移動(見守り)
- ズボンの上げ下ろぎに時間を要する
- 排尿約100ml、下着に少量のもれあり
- 「間に合わなかった」と話された
【施設の記録ルール】
- Sは利用者の言葉を「」で引用
- Oは数値・時間・回数を含める
- AはSとOの根拠に基づく判断(医師の診断名は書かない)
- Pは「誰が・いつまでに・何を」を明記
3パターンのSOAP記録を出力してください。
AI活用の3つのポイント
- 個人情報は伏せる:氏名・生年月日・施設名は入力せず、年齢・性別・主症状にとどめます。
- 観察事実を箇条書きで:入力が具体的なほど出力精度が上がります。「数値」と「時間」を必ず含めます。
- 出力は必ず事実確認:AIの生成内容は下書き扱いとし、事実と異なる部分を職員が修正・署名します。
AIで例文のたたき台を作り、S・O・A・Pの書き分け(第6節)で点検する——この2段階を踏めば、記録時間を短縮しながら質を保てます。
8. まとめ+FAQ
まとめ
本記事は例文マトリクスに特化しました。押さえるべきは次の5点です。
- マトリクス20選(第2節)を職種別・場面別の引き台として使う
- Sは利用者の言葉・Oは数値・Aは因果・Pは誰がいつまでに何を の4原則
- 介護はBPSD・嚥下、看護は責任範囲の境界、リハは測定値をOに必須
- NG/OK対比(第6節)で記録完了前に1分点検する
- AIは下書き作成に使い、事実確認は職員が行う
書き方の理論は「SOAPの書き方ガイド」、看護は「看護SOAP」、リハビリは「リハビリSOAP」、全体は「SOAP総合ガイド」へ。
よくある質問(FAQ)
Q1. 例文をそのまま使っても良いですか? 数値や場面は架空の設定です。自施設の利用者属性に合わせて差し替えた上で、事実確認をしてから記録することをおすすめします。
Q2. 介護と看護でSOAPの書き方は違いますか? 基本の4要素は同じですが、Aの責任主体が異なります。看護は医師の診断名をAに書かず看護判断で書きます。詳細は看護SOAPをご覧ください。
Q3. リハビリのOに必須の数値は何ですか? ROM・MMT・Brs・FIM・TUG・BBSなど、実施した評価の測定値です。前回値との比較も入れると経過が分かります。
Q4. BPSDの場面でSが取れない時はどう書きますか? 発語がない場合は「意識レベルJCS〇〇、明確な発語なし」とOに客観事実を記載します。無理にSを補完せず、観察事実で記録します。
Q5. AIで作った例文は監査で問題になりますか? 2026年現在、AI使用を禁止する法令はありません。ただし個人情報の保護と、出力の事実確認・職員の署名が前提です。
参考文献・出典
- 厚生労働省老健局「介護記録の適切な作成・保存について」(老企第27号、平成18年3月)
- 医療法施行規則(昭和23年厚生省令第45号)別表第二(診療録の記載・保存)
- 医師法第24条(診療録の記載義務)
- Weed LL. "Medical records that guide and teach." N Engl J Med. 1968;278(11):593-600, 278(12):652-657.
- 厚生労働省「介護サービスの種類に応じた介護報酬等の算定構造」(2024年改正)