ADL・FIM評価2026.06.09

ADLとは?バーセル指数からFIMまで、介護現場で使える評価スケール完全ガイド

ADL(日常生活動作)の基本から、バーセル指数・FIM・Lawton IADL尺度の評価方法まで、介護現場ですぐ使えるスケールを図解付きで解説します。

12分で読める2026.06.09CareShift Media 編集部
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ADLとは?バーセル指数からFIMまで、介護現場で使える評価スケール完全ガイド

ADLとは?バーセル指数からFIMまで、介護現場で使える評価スケール完全ガイド

ADL・FIM評価の記事一覧FIMとは?(評価方法・採点の完全ガイド)SOAPの書き方(評価の記録方法)

この記事の要点 ADL(Activities of Daily Living=日常生活動作)とは、人が日常生活を送る上で基本的に必要となる動作のことです。具体的には食事・排泄・入浴・着替え・移動などが該当します。介護現場では利用者のADL能力を客観的に評価するため、バーセル指数(Barthel Index)FIM(Functional Independence Measure)Lawton IADL尺度などの標準化された評価スケールが使われます。本記事ではこの3つのスケールの評価方法と採点を、介護現場ですぐ使える形で解説します。


1. ADLとは?60秒でわかる基本

ADL(日常生活動作)は、介護保険の要介護認定やケアプラン作成において、利用者の支援ニーズを把握するための最も基礎的な評価対象です。 厚生労働省の要介護認定調査では、基本調査項目の一部としてADL関連項目(歩行・移乗・食事・排泄など)が設定されています。

ADLは、利用者「自身がどの程度自立して行えるか」を測る指標です。これを正しく評価することで、以下が可能になります。

  • 要介護度の客観的な根拠の提示
  • ケアプランの目標設定(「現状○点→3ヶ月後△点」など数値目標が立てられる)
  • リハビリの効果測定(介入前後で点数を比較)
  • スタッフ間・職種間の情報共有(「バーセル指数65点」と言えば状況が共有できる)

2. ADL vs IADL vs QOL 違い比較表

評価対象を取り違えると、支援の方向性がずれます。 ADL(基本的生活動作)・IADL(手段的生活動作)・QOL(生活の質)は、それぞれ評価したい領域が異なります。

比較項目ADLIADLQOL
日本語名日常生活動作手段的日常生活動作生活の質
評価対象食事・排泄・入浴・移動など(自己完結的な動作)買い物・料理・金銭管理・服薬など(社会的・複合的な動作)主観的な幸福感・生きがい
測定方法バーセル指数・FIMLawton IADL尺度WHO-QOLなど
向く場面身体機能の低下を把握したい時在宅での自立度・認知機能を推測したい時精神的・社会的支援を検討したい時

IADLが低下し始めるのはADLより早い段階(軽度の認知機能低下等)であることが多いため、早期発見の指標としても使われます。


3. バーセル指数(Barthel Index)の評価方法

バーセル指数は介護現場で最も広く使われているADL評価スケールです。 1965年にMahoneyとBarthelが提唱し、10項目・合計100点満点で評価します(日本では15点刻みの100点満点版が一般的)。点数が高いほど自立度が高いことを示します。

バーセル指数 10項目の採点表

評価項目自立一部介助全介助
食事1050
移乗(椅子・車椅子)1510(または5)0
整容(顔を洗う・歯磨き等)500
トイレ動作1050
入浴500
歩行(平地)15(自立)/ 10(歩行器)0(不能)0
階段昇降1050
着替え1050
排便コントロール10(失禁なし)5(時々失禁)0(失禁常態)
排尿コントロール10(失禁なし)5(時々失禁)0(失禁常態)

合計点の目安(参考):

  • 100点:完全自立
  • 60点以上:おおむね自立(介護の手間は比較的少ない)
  • 40〜59点:一部介助が必要
  • 20〜39点:要介護(多くの介助が必要)
  • 0〜19点:全介助

バーセル指数の評価例(NG/OK)

❌ NG例(根拠がない): バーセル指数は低いです。 ⭕ OK例: バーセル指数60点(前回評価時75点から15点低下)。内訳:食事10・移乗10・歩行10・階段0・着替え5・トイレ5・入浴5・整容5・排便5・排尿5。階段昇降と着替えの低下が主因。

注意: バーセル指数は「介助なしでできるか」を評価します。「見守り」は項目によって自立・一部介助のどちらかに分類されます。施設の採点基準を統一しておくことが、スタッフ間の評価のブレを防ぐポイントです。


4. FIM(Functional Independence Measure)の評価方法

FIMは、バーセル指数より詳細な18項目・7段階評価のスケールです。 運動項目(13項目)と認知項目(5項目)からなり、合計126点満点(18項目×最高7点)。リハビリテーション施設や回復期病棟で、機能回復の経過観察に広く使われています。

FIMの7段階評価基準

点数レベル状態
7完全自立補助具を使用しても安全・時間内に自立
6修正自立補助具・時間制限・安全性の配慮が必要だが概ね自立
5監視または準備介助者なしで実施可能だが、見守り・準備・声かけが必要
4最小介助利用者が努力の75%以上(介助は25%未満)
3中等度介助利用者が努力の50%以上(介助は50%未満)
2最大介助利用者の努力は25%以上(介助は75%未満)
1全介助利用者の努力は25%未満(自己達成不可)

FIM 18項目の内訳

運動項目(13項目・最高91点)

  1. 食事
  2. 整容
  3. 清拭(上半身・下半身)
  4. トイレ動作
  5. 大便コントロール
  6. 小便コントロール
  7. ベッド・椅子・車椅子間の移乗
  8. トイレへの移乗
  9. 浴槽・シャワーへの移乗
  10. 歩行(または車椅子)
  11. 階段
  12. 着替え(上半身)
  13. 着替え(下半身)

認知項目(5項目・最高35点)

  1. 理解
  2. 表出(表現)
  3. 社会的交流
  4. 問題解決
  5. 記憶

FIMとバーセル指数の使い分け

項目バーセル指数FIM
評価項目数10項目18項目(運動13+認知5)
満点100点126点
評価段階3〜4段階7段階(介助量が詳細)
認知機能評価しない評価する
向く場面介護施設での簡易評価リハ施設での詳細な経過観察

実務のポイント: FIMは認知項目を含むため、認知症の進行と身体機能の低下を別々に追跡できます。「運動項目は安定しているが認知項目が低下」のような傾向把握に強力です。


5. Lawton IADL尺度の評価方法

Lawton IADL尺度は、手段的生活動作(IADL)を評価する標準的なスケールです。 1969年にLawtonとBrodyが提唱。8項目について「自立(1点)・非自立(0点)」で評価し、合計0〜8点。在宅高齢者の自立度評価や、軽度の認知機能低下の早期発見に有用です。

Lawton IADL 8項目

評価項目自立(1点)の目安
電話の利用自発的に電話をかける・受ける
買い物一个人で買い物ができる
食事の準備適切に食事の準備ができる
家事家事を分担・管理できる
洗濯自分で洗濯ができる
交通機関の利用独自に外出・移動できる
服薬管理正しいタイミング・量で服薬できる
金銭管理経理・支払いを自分で管理できる

合計点の目安:

  • 8点:全項目自立
  • 5〜7点:一部に支援が必要
  • 4点以下:在宅生活の維持に広範な支援が必要(認知機能低下の疑い)

ポイント: IADLは「できたか」ではなく「普段しているか」を評価します。環境的要因(家族がやってしまう等)で能力が隠れていることがあるため、面接時には「もし一人でやるとして」と確認すると実態に近い評価になります。


6. 評価結果をケアプラン・記録にどう活かすか

ADL評価の真価は、ケアプランの目標設定とSOAP記録の評価(A)に使うことで発揮されます。

目標設定の例:

  • 現状:バーセル指数55点(移乗10・歩行10)
  • 3ヶ月目標:バーセル指数65点(移乗15・階段5に向上)
  • アプローチ:PTによる歩行訓練週3回、移乗時の見守り継続

SOAPのA(評価)に使う例:

  • ❌ NG:歩行が不安定
  • ⭕ OK:バーセル指数歩行項目10点(前回15点から低下)。TUG16秒(転倒ハイリスク基準の12秒超)。右下肢MMT3による筋力低下が主因と判断。

ADLの低下はヒヤリハット(転倒等)のリスク上昇に直結するため、評価の継続的モニタリングが事故防止にもつながります。


7. まとめ+FAQ

まとめ

  1. ADLは食事・排泄・入浴・移動など、日常生活の基本動作。要介護認定・ケアプランの基礎データ。
  2. バーセル指数は10項目100点満点。介護施設で最も一般的な簡易評価。
  3. FIMは18項目126点満点・7段階評価。認知項目を含み、リハ施設での詳細な経過観察に適する。
  4. Lawton IADLは8項目。買い物・服薬等の手段的動作で、認知機能低下の早期発見に有用。
  5. 評価結果はケアプランの数値目標と**SOAPのA(評価)**に活かす。

FAQ(よくある質問)

Q1. バーセル指数とFIMはどちらを使えばよいですか? 施設の目的によります。簡易に全体像を把握したい場合はバーセル指数、リハビリの細かな経過観察や認知機能も追いたい場合はFIMが適しています。両方を併用する施設もあります。

Q2. 評価スケールは誰が実施しますか? 原則として介護職・看護職・リハ職が実施します。ただしFIMは教育を受けた評価者間で信頼性が保たれるため、研修を受けることが推奨されています。

Q3. 「見守り」は自立か介助かどちらですか? スケールにより異なります。FIMでは「見守り・準備」は5点(自立に近い区分)として扱いますが、バーセル指数では項目によって扱いが異なります。施設の評価基準を文書化して統一しましょう。

Q4. 要介護認定とバーセル指数はどう違いますか? 要介護認定は介護保険法に基づく公的な認定制度で、認定調査(基本調査)とコンピュアト判定・介護認定審査会の審査を経て決定されます。バーセル指数はその中で使われることのある民間の評価ツールの一つで、認定そのものを決める単一の基準ではありません。

Q5. ADL評価はどの頻度で実施すべきですか? 入所時・退所時のほか、状態変化時や定期的(月1回〜3ヶ月に1回程度)な再評価が望ましいです。定期的な評価で、低下の早期発見と介入効果の測定ができます。

Q6. 認知症の利用者にLawton IADLは使えますか? 使えます。むしろIADLの低下は認知機能低下の初期指標として有用です。ただし本人・家族からの聞き取りで「実際の生活場面」を確認することが大切です。


参考文献・出典

  • Mahoney FI, Barthel DW. "Functional evaluation: the Barthel Index." Md State Med J. 1965;14:61-65.
  • Granger CV, et al. "Functional independence measure (FIM)." Uniform Data System for Medical Rehabilitation.
  • Lawton MP, Brody EM. "Assessment of older people: self-maintaining and instrumental activities of daily living." Gerontologist. 1969;9(3):179-186.
  • 厚生労働省「要介護認定に係る介護認定審査会による審査及び判定の基準等について」
  • 日本介護支援専門員会「介護支援専門員実務研修受講テキスト」

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CareShift Media 編集部

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